展示会企画約7分

ブースも配布物も完成した。それでも展示会がうまくいかなかった理由

ブースや配布物を完成させても、展示会の成果につながるとは限りません。説明中心だった接客を振り返り、制作前に決めておきたい目的、ターゲット、会話の設計を整理します。

ブースも配布物も完成した。それでも展示会がうまくいかなかった理由をテーマにした設計図風の模式図

展示会を担当し始めた頃の私は、ブースデザインや配布物を完成させることで精一杯でした。

けれど、準備物が完成しても、展示会がうまくいっているという実感はありませんでした。当日の接客も、来場者に何かを聞くより、こちらからサービスを説明する時間が中心になっていました。

つくるべきものは完成している。それでも、何かが足りない。

あとから振り返ると、足りなかったのは制作物ではなく、展示会全体の前提でした。

完成させることが、いつの間にか目的になっていた

展示会の準備には、決めることがたくさんあります。

ブースのレイアウト、壁面のコピー、パネル、配布物。制作会社とのやり取りには締切があり、社内の確認にも時間がかかります。目の前のタスクを一つずつ終わらせなければ、そもそも当日を迎えられません。

だから、制作物が完成すると、ひとまず準備が終わったように感じます。

ただ、ブースや配布物は、来場者と接点をつくるための手段です。完成したかどうかは確認できても、誰と、どのような会話を始めるためのものなのかまでは、完成品を眺めるだけでは分かりません。

私が最初に追っていたのは、制作の進行でした。

誰に来てほしいのか。その人が何に困っているのか。会話の中で何を確かめ、次に何を約束できればよいのか。そうした問いは、制作物の締切ほど目立ちません。けれど、この部分が曖昧なままでは、当日の接客も曖昧になります。

完成したもの/まだ決まっていなかったことを整理した設計図風の模式図
完成したもの/まだ決まっていなかったこと考え方の模式図

当日起きていたのは、説明する側だけの進行だった

当時の接客は、ヒアリングよりサービス説明が中心でした。

説明中心だった接客をどう見直したかは、展示会の接客を「説明の時間」にしないためにで詳しく書いています。

自社のことを理解してもらおうとすれば、説明したい内容は増えます。製品やサービスの特長、できること、他との違い。どれも伝える理由がある情報です。

一方で、説明している間は、相手の状況を知ることができません。

来場者がどのような立場で、何に困り、どこまで検討しているのか。こちらの技術や製品と接点があるのか。次に話を続ける理由があるのか。聞かなければ分からないことが残ります。

説明が間違っていたわけではありません。問題は、接客の目的が「こちらのことを伝える」に寄りすぎていたことでした。

展示会の短い接点で、すべてを理解してもらう必要はありません。むしろ、相手をほとんど知らないまま説明を終える方が、その後につながる材料を残しにくくなります。

完成品だけを見ても、来場者との会話は設計できない

ブース制作の打ち合わせでは、形のあるものが議題になりやすいものです。

どの言葉を大きくするか。パネルを何枚置くか。どの製品をどこで見せるか。もちろん、どれも必要な判断です。

しかし、当日の会話は図面の外にあります。

ブースの前を通る人のうち、誰に声をかけたいのか。足を止めた人へ、最初に何を聞くのか。説明やデモをしたあと、どの状態なら次の商談へ進めるのか。そこで得た情報を、営業へどう渡すのか。

ここまで決めて初めて、壁面やパネルに何を載せるべきかも見えてきます。

制作会社にデザインを依頼することと、展示会の目的や会話を決めることは、つながってはいますが同じ仕事ではありません。制作物へ落とし込む前に、出展する側が決めておくべきことがあります。

見直したのは、制作物より先にある前提だった

私はその後、接客と企画の前提を見直しました。

いきなりブース案から考えるのではなく、来てほしい相手と、その人が抱える課題を整理する。自社が伝えたい機能からではなく、相手の関心から言葉を組み立てる。そして、当日の接客で聞くことや、次の行動へ進む条件を決める。

制作物の見た目を変えるだけではなく、その手前にある判断を変える必要がありました。

これは、ブースや配布物が重要ではないという話ではありません。目的と会話が定まっているからこそ、制作会社にも必要な要件を渡せます。どの情報を壁面に置き、どこから先をスタッフの説明やデモに任せるのか。その役割分担も考えやすくなります。

詳しい準備の順番は、「展示会企画は、ブースのデザインから始めない」でも整理しています。

次回の準備で、「完成」の定義に加えたいこと

制作物の完成日は分かりやすい一方、企画や接客の準備には明確な納品日がありません。そのため、後回しになりがちです。

次回の準備では、ブースや配布物と一緒に、次の問いにも答えられる状態を「完成」に含めてみてください。

  • 誰に来てほしいのか、その人の課題をどう捉えているか
  • 会場で何を確かめ、どのような会話につなげたいか
  • 得た情報と次の接点を、誰へどう渡すか

すべてを細かく決め切る必要はありません。ただ、スタッフごとに答えが大きく違うなら、制作物の外側に未完成の部分が残っています。

制作物の完成と、展示会の成果は同じではない。

ブースも配布物もそろったとき、来場者との会話まで準備できているか。展示会の「完成」は、そこまで含めて考えたいと思っています。