以前の展示会ブースでは、壁一面に情報を載せていました。
製品名、機能、用途、実績。伝えたい情報をそろえて並べたつもりでした。
ところが、通路を歩く来場者には、ほとんど目に留まりませんでした。
情報を増やすほど、来場者が自分に関係する内容を見つけにくくなる。壁面全体が「大きな説明書」になっていたのです。
情報を並べるほど、優先順位が見えにくくなった
製品名、機能、用途、実績が同じ強さで並ぶと、どこから見ればよいのか分かりません。来場者は、自分に関係する情報を探し当てる前に通り過ぎてしまいます。
この経験から、来場者はまず次のことを見ている、と考えるようになりました。
- 自分の仕事に関係がありそうか
- 今抱えている困りごととつながりそうか
- 少し立ち止まって話を聞く価値がありそうか
自社が伝えたい順番と、来場者が知りたい順番は違う。
当たり前のように聞こえますが、壁面をつくっている最中は、意外と見失いやすいことでした。

「情報を減らす」だけでは、うまくいかない
次の展示会では、壁面の情報量を減らし、ターゲットが抱える課題に合うメッセージを大きくしました。
詳しい機能や用途は、足を止めてもらったあとの会話やデモへ回します。
削る前に、来てほしい相手を決める
一方で、何を載せないかを決めるには、今回の展示会で誰に来てほしいのかを決めなければなりません。
たとえば、次の二つでは、壁面で最初に見せるべき言葉が変わります。
- 製品の比較検討を始めた担当者に、具体的な違いを伝えたい
- まだ解決方法を探している担当者に、自社の課題だと気づいてもらいたい
ターゲットが曖昧なままでは、情報の優先順位も決められません。文字数だけを減らしても、短くなった説明書ができるだけです。
先に必要なのは、コピーを削る作業ではなく、誰の、どの課題に向けたブースなのかを決める作業でした。
ブースは、パンフレットの拡大版ではない
ブースをパンフレットの拡大版として考えると、壁面だけで説明を完結させようとして文字が増えていきます。
壁面、会話、デモ、配布資料は、役割を分けて考える必要があります。
ブースの壁面が最初に担うのは、すべてを理解してもらうことではありません。
- 足を止めてもらう
- 自分に関係があると感じてもらう
- 会話を始める
この順番です。
反対に、「これは、うちの課題かもしれない」と思ってもらえれば、そこから状況を聞けます。必要に応じてデモを見せ、詳しい資料を渡すこともできます。
ブースの言葉は、説明の結論ではなく、会話の入口です。

制作会社へ依頼する前に、整理しておきたい5つのこと
ブースデザインを依頼する前に、整理したいのは次の5つです。
今回、最も来てほしいのは誰か
業種や企業規模だけでなく、担当部門や立場まで考えます。同じ製品でも、現場担当者と責任者では気になることが違います。
その人は、どのような課題を抱えているか
自社製品の機能から逆算するのではなく、相手が日常業務で困っていることを言葉にします。
技術や製品が、その課題にどう役立つか
機能名を並べるのではなく、その機能によって相手の仕事がどう変わるのかを整理します。
ブースで、どのような会話を始めたいか
壁面を見た来場者に、スタッフが何と声をかけるのか。その後、何を聞きたいのか。会話まで想像すると、必要な情報が見えやすくなります。
壁面と、会話やデモの役割をどう分けるか
最初に見せる情報、会話の中で伝える情報、デモで体験してもらう情報、持ち帰って読んでもらう情報を分けます。
ここが決まると、制作会社へ渡す要件も変わります。
「先進的な雰囲気にしたい」「目立つブースにしたい」といった印象の話だけではなく、誰に、何を、どの順番で伝えたいかを共有できます。デザイン案を好みだけで判断することも減ります。
余白は、目的ではなく結果
情報を減らすこと自体が目的ではありません。
来場者が自分の課題とこのブースの関係を見つけられるように、ターゲットと課題から、最初に伝える一つを決める。その結果として余白が生まれます。
ブースの改善というと、色や形、装飾の話から始まりがちです。けれど、最初に見直した方がよいのは、壁面に置く言葉の優先順位かもしれません。
ブースの壁は、説明書ではありません。来場者との会話を始める、一枚目のページです。
