ブース・訴求設計約6分

展示会ブースの壁を「説明書」にしないために

製造業の展示会ブースで、壁面に情報を詰め込んだ結果、かえって来場者に伝わりにくくなった経験を紹介。情報を減らす前に整理したいターゲット、顧客課題、訴求、会話の設計を解説します。

壁面に大きな表示面を設けた製造業向け展示会ブースの設計図風イラスト

以前の展示会ブースでは、壁一面に情報を載せていました。

製品名、機能、用途、実績。伝えたい情報をそろえて並べたつもりでした。

ところが、通路を歩く来場者には、ほとんど目に留まりませんでした。

情報を増やすほど、来場者が自分に関係する内容を見つけにくくなる。壁面全体が「大きな説明書」になっていたのです。

情報を並べるほど、優先順位が見えにくくなった

製品名、機能、用途、実績が同じ強さで並ぶと、どこから見ればよいのか分かりません。来場者は、自分に関係する情報を探し当てる前に通り過ぎてしまいます。

この経験から、来場者はまず次のことを見ている、と考えるようになりました。

  • 自分の仕事に関係がありそうか
  • 今抱えている困りごととつながりそうか
  • 少し立ち止まって話を聞く価値がありそうか
自社が伝えたい順番と、来場者が知りたい順番は違う。

当たり前のように聞こえますが、壁面をつくっている最中は、意外と見失いやすいことでした。

情報を並列に詰め込んだ壁面と、主メッセージを一つに絞った壁面の比較図
情報を並列に置く主メッセージを一つに絞る考え方の模式図

「情報を減らす」だけでは、うまくいかない

次の展示会では、壁面の情報量を減らし、ターゲットが抱える課題に合うメッセージを大きくしました。

詳しい機能や用途は、足を止めてもらったあとの会話やデモへ回します。

削る前に、来てほしい相手を決める

一方で、何を載せないかを決めるには、今回の展示会で誰に来てほしいのかを決めなければなりません。

たとえば、次の二つでは、壁面で最初に見せるべき言葉が変わります。

  • 製品の比較検討を始めた担当者に、具体的な違いを伝えたい
  • まだ解決方法を探している担当者に、自社の課題だと気づいてもらいたい

ターゲットが曖昧なままでは、情報の優先順位も決められません。文字数だけを減らしても、短くなった説明書ができるだけです。

先に必要なのは、コピーを削る作業ではなく、誰の、どの課題に向けたブースなのかを決める作業でした。

ブースは、パンフレットの拡大版ではない

ブースをパンフレットの拡大版として考えると、壁面だけで説明を完結させようとして文字が増えていきます。

壁面、会話、デモ、配布資料は、役割を分けて考える必要があります。

ブースの壁面が最初に担うのは、すべてを理解してもらうことではありません。

  1. 足を止めてもらう
  2. 自分に関係があると感じてもらう
  3. 会話を始める

この順番です。

反対に、「これは、うちの課題かもしれない」と思ってもらえれば、そこから状況を聞けます。必要に応じてデモを見せ、詳しい資料を渡すこともできます。

ブースの言葉は、説明の結論ではなく、会話の入口です。

通路からブースの主メッセージを見て、スタッフとの会話、デモへ進む流れを示した図
通路壁面会話デモ考え方の模式図

制作会社へ依頼する前に、整理しておきたい5つのこと

ブースデザインを依頼する前に、整理したいのは次の5つです。

01

今回、最も来てほしいのは誰か

業種や企業規模だけでなく、担当部門や立場まで考えます。同じ製品でも、現場担当者と責任者では気になることが違います。

02

その人は、どのような課題を抱えているか

自社製品の機能から逆算するのではなく、相手が日常業務で困っていることを言葉にします。

03

技術や製品が、その課題にどう役立つか

機能名を並べるのではなく、その機能によって相手の仕事がどう変わるのかを整理します。

04

ブースで、どのような会話を始めたいか

壁面を見た来場者に、スタッフが何と声をかけるのか。その後、何を聞きたいのか。会話まで想像すると、必要な情報が見えやすくなります。

05

壁面と、会話やデモの役割をどう分けるか

最初に見せる情報、会話の中で伝える情報、デモで体験してもらう情報、持ち帰って読んでもらう情報を分けます。

ここが決まると、制作会社へ渡す要件も変わります。

「先進的な雰囲気にしたい」「目立つブースにしたい」といった印象の話だけではなく、誰に、何を、どの順番で伝えたいかを共有できます。デザイン案を好みだけで判断することも減ります。

余白は、目的ではなく結果

情報を減らすこと自体が目的ではありません。

来場者が自分の課題とこのブースの関係を見つけられるように、ターゲットと課題から、最初に伝える一つを決める。その結果として余白が生まれます。

ブースの改善というと、色や形、装飾の話から始まりがちです。けれど、最初に見直した方がよいのは、壁面に置く言葉の優先順位かもしれません。

ブースの壁は、説明書ではありません。来場者との会話を始める、一枚目のページです。

EXHIBITION PLANNING

次回のブースで、何を残し、何を会話へ回すか迷っている方へ。

展示会改善企画では、現在の施策と過去の出展結果を確認し、ターゲット、顧客課題、訴求、ブース構成、接客までを、社内や制作会社が実行できる形に整理します。

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